清盛を見返す。

平清盛とは

平清盛は2012年度の大河ドラマです。私にとっては久しぶりに(おそらく武田信玄以来)最初から最後まで見た大河ドラマです。しかし、一般的にはひどい言われようでとっても冷遇されたドラマでした。言いがかりのような批評が多くて、熱中していた私はそんな批評を見るたびに心を痛めてました。でも、とても冷遇されたゆえに、より愛が深くなったドラマです。

平清盛以来ひさびさに大河を最初から最後まで真田丸で完走したので、大河ドラマ熱ががっと上がって、清盛をがっと見返したら、熱ががっと盛り返しました。

 

NHK大河ドラマ 平清盛 完全版 DVD-BOX 第壱集

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40話あたりから見返したら(なぜこんなところから見返したかは後述します)、藤原姓の人が出過ぎで、一瞬誰が誰だか思い出せませんでした。このドラマが嫌われてしまった理由は「ただでさえ政治的に難しくてわかりにくい平安末期の上に、登場人物が出過ぎで、誰が誰だかわからーん」というものでしたが、確かに途中乗車しちゃった場合は、誰だかわかるのは難しいとは思いました。上皇と天皇と藤原と平氏と源氏と坊主が出過ぎです。おかげさまで1話から見返しましたが、見返したらちゃんと思い出しましたよ。

この大河の好きなところ

平安末期といえば、人以外の何かが住んでいる時代ですが、このドラマ全部を通して、魍魎がどこかにいる感じが漂っているところが最高に好きです。リアルタイムを生きずに古いものの上に古いものを積んで住んでいるやんごとない方々にその傾向が顕著で、死んだ人が死なずに、まだ生きている人の上に永遠に蠢く影を落とし続ける感じがとても良い。

白河上皇の子を宿した白拍子が、もし宿った子が生まれれば災いがもたらされるという陰陽師の言葉に従って我が子を殺さんとする上皇から逃げた末に捕まってしまい、生み落とした赤子(=清盛)の目の前で上皇に矢ぶすまにされるというところから、この大河は始まります。いかにもなんか魍魎が住んでいる時代という感じのスタートです。

途中、成人した主人公の清盛が、熱に浮かされた夢の中で、実の父である白河院と双六をする場面があるのですが、その場面の雰囲気が本当に、中世の御伽草子とかでありそうな魍魎感が漂っていて、とてもとても良いのです!

この大河は伝奇物語です。

実際に怨霊になる人も出てくるし、主人公は生霊になるし、マイケルジャクソンのスリラーかよ!という演出の、ファンキー雅仁親王の青墓へのご旅行エピソードとか、いくらなんでもそれはぶっとびすぎだろう、という演出も、全体を覆う魍魎感のなかでなんとなくおさまっちゃってる感じがします。この感じがOKかNOかで評価が分かれるんでしょうね。

一番好きな登場人物

で、どうして急に中途半端なところから見直したかといいますと、政子ちゃんですよ!杏さん演じる北条政子ちゃんが強烈に見たくなって、途中から見直したんです。

この物語の中で、政子ちゃんはもっともキラキラした生命力の塊の娘さんでしてね!自分が仕留めたイノシシを背負って、物語の中に初登場するのですが、今日が明日か明日が今日かなんていうすべてが曖昧模糊な抑うつ状態になっていた源頼朝君の目を覚まさせ、「いっしょに明日に連れて行ってくれ!」という頼朝君に「ともにゆこうぞ」といって手を差し伸べるのです。これじゃ頼朝君が姫で政子ちゃんが王子様だろうよ。

この時期の平氏は円熟しきって没落寸前感満載で、それに対しての芽吹いたばかりの爆発的な若さと生命力をもつ鎌倉方の対比がまぶしくて切なかった。
(ついでに見返した時の私の状態が頼朝君とそっくりな状態で、政子ちゃんのキラキラ感に癒されました)

見返してみて、もうひとり印象的だった人は、清盛の妻、時子ちゃんでした。娘さんの頃は、源氏物語を熱心に読むような、物語に憧れ少女漫画大好き!な感じの明るく元気なふわふわのお嬢さんなのですが、そのかつては無邪気なお嬢さんだった時子が、何十年も時を経て、栄華も没落も経たその最期に、すべてを悟り切った強いまなざしで「海の底にも都はございましょう」といって壇ノ浦に入水しちゃうってのが涙涙でした。少女時代にはまさかこんな最期になるとは思いもよらないよなぁ。

遊びをせんとや

 この物語の中で、何度も何度も繰り返される歌が、遊びをせんとや生まれけむです。

遊びをせんとや生れけむ

戯れせんとや生れけん

遊ぶ子供の声きけば

我が身さえこそ動がるれ

これは、大河の中でも登場する人物である後白河上皇の編纂した梁塵秘抄に載っている歌です。梁塵秘抄と言えばこの歌っていうぐらいの有名な歌だそうですが、はずかしながら大河で知るまで私は知りませんでした。もともとこの歌は今様と言われる当時の流行歌だったそうですが、表現されている躍動感が生々しく感じられて、すごく現代っぽい感じがします。

 

 

衛星放送のチャンネル銀河で「平清盛」が2017年2月から連日で放送予定だそうです。

もしご覧になることのできる方はぜひぜひ。